詩集



メモ紙一枚とボールペン

咄嗟のことだが決めたのは私

あんなにいつも スワイプとタップの

毎日のはずが これほどまでに

うごかない利き手があろうかと…


伝えたいことは ごく単純で

ただ飾り気のない私だから

ふと 窓ガラスの向こうや

キッチンの方にある食器棚や

そばに転がるぬいぐるみなどを

付け加えてみようかな と


小さなメモ紙一枚に

費やした時の流れは

想い巡らすには儚くも

見えない温もりを宿して



『置き手紙』



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知識と欲情は

フラスコの中で

飛沫たつ程の荒波となり

私は我を忘れた


言葉の変換は

惚けたタイムラグの中で

衝動を隠しきれず

裏腹な行動となる


世界は私を小馬鹿にするだろう


でもそれが無駄ばかりの恋物語と

真剣に向き合う私の本心であるのだから…



『ひとつ席を空けた理由』



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優しさとは残酷なもの


ひとり歩きの少女に

とある夫人が林檎を与え

飢えた野良犬に

ひとり歩きの少女は林檎を与え

とある家族に

野良犬が拾われ

ひとり歩きの少女は

今夜もまた 星を数えて朝陽を待つ


優しさとは残酷なもの


ただ ひとり歩きの少女は

瞳の潤みを悲しませないでいる



『林檎の行方』



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新横浜の改札は

行き帰りの足音で

鳴り響いてる

僕らの言葉を

搔き消すように

鳴り響いてる


どっちから手を離して

どっちから笑ったんだろう

想ったよりあっけないね

瞬きあと背を向けてた


駅をでたら外は雨

予報にもなかった雨

乾いた頰を濡らす雨

こんなはずじゃなかった…雨



surprise rain



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真夜中に忍んだシャッター街で

一匹狼の女が歌う

引っ掻いたような跡がついたギターだけど

爪先の短い指が弦を爪弾く


木霊した言葉は激情故儚く

嘲笑う奴らの小銭となる

それでも女は歌い続けた

その視線の向こうに何かを見据えて


少しばかり胸元がはだけていても

少しばかり素足を見せていても

くだらない男には牙をむいて

本当の戦いをこの歌に込めた


ねぇ 聞け それ 聞け…


真夜中に忍んだシャッター街で

一匹狼の女が歌う

右から左へ 左から右へ

行き交う者らは浮世へと消える


それでも女は歌い続けた…



『一匹狼の女』



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あきらめた あきらめた

何かを押し殺すかのように


あきらめた あきらめた

意を決してあきらめた


それが真っ直ぐな正義や夢だったとしても

罪を承知な純愛だったとしても

なんやクソ中途半端な奴やな

なんて言われたとしても

何も言わずに歯をグッと食いしばってさ


あきらめた あきらめた

何かを押し殺すかのように


あきらめた あきらめた

意を決してあきらめた


あきらめた あきらめた

あきらめない奴 よう見とけや



『あきらめない奴へあきらめた奴より』